decade
前に会ったのはそのくらい。
バルに入って、私が生まれてはじめ歌舞伎町の夜の街へ溶け込んだ日だった。
あの日はバルからドキドキしていたし、バルから出たあとの自分の言動の記憶はない。気付いたらホテルで、理性のボタンが外れていた。
会える、やっぱ会えない…。
やがて連絡先もよく分からなくなった。
この世は諸行無常だから仕方のないものだと割り切る。
今夜、本人の顔を見るまでは納得しないし、夢を見ているんだと言い聞かせていた。
あの頃の自分は25で、私には若さと欲望が漲っていたが、今は欲望だけだ。しかも年相応に振る舞う為には、欲望の出し方もコントロールしないといけない。
待ち合わせから40〜50分くらい経った頃、10年ぶりに会えた。嬉しくて、嬉しくて…でもそんな気持ちとは裏腹に、欲まみれの自分を出すのはとてもはしたないように思えた。
私の仕事の話(こんな話はどうでもいい)に耳を傾けてくれ、向こうの仕事の話を聞く。とても偉くなっていて、飄々さに更に磨きがかかっているように感じた。そして、それがまた魅力的だった。
何度か顔を近づけたくなったり、手で触れてみたい欲求に駆られたが、我慢した。
私たちの時間は有限だ。
次の場所へと向かう。
10年前と同じように、歌舞伎町の街へ溶け込んだ。前より、理性的な恥じらいが脳内を占めてしまい、手を繋ぎたいけど、繋げず、もっと話したいけれど話せなかった。
ホテルへ着いても私の気持ちは同じままだ。
向こうは飄々と服を脱ぎ、一緒にお風呂に入ろうと言う。
私の気持ちはそれどころじゃないのだけれど、逆にウジウジしたところで、イタズラに時間が過ぎていくだけだ。
私はバスタブに入る。
彼は大股を開き、口笛を吹く。
私は開かれた股の中におさまり、薄暗い浴室のどこに視線を向けていいのか分からなかった。
すると、とあるタイミングで何も言わず、彼のモノが私の口に入ってきた。グニュっとしたペニスがにゅるりと入る。
それがスイッチのように、私は蛇口から出た水のように呑み込む。砂漠を歩いた後の水分補給のように、吸い付いて、吸い付いて、呑み込んだ。
彼の吐息が漏れる。それがすごくセクシーで、もっともっと聞きたくて、更に吸い付く。
ベッドに入り、ただひたすらペニスを貪る。
ずっと触りたかったこのペニス。この身体。
私の全エネルギーがそこへ消えてしまって、無くなっても良いやって思った。
私は激しく彼が好きで、愛しくてたまらなかった。奥底に溜めていた10年分の気持ちが込み上げてきて、涙が出た。
触れられるところは電気が走り、自分の身体が反応する。本当に気持ちが良い…。
ペニスがアソコに入り、更に身体に電気が走る。アソコがペニスを離したくないのが感覚的に伝わる。その位置が前後に動き、摩擦が加速するたびに、ぐちゃぐちゃに塗り固められた理性の壁が崩れていく。
すごく気持ちが良いまま、お互い果てた。
行為が終わって、また理性の壁が作られた。
向こうが私の事をどう思っているか、怖くて聞けなかった。
私は感覚的にとても会う人だと思うけれども、自惚れかも知れないと、ブレーキがかかる。
私がどれだけ好きでいても、お互いの生活を崩すことはしないし、崩すつもりもない。
只々、脳内で結論付ける話。
私は彼のことが、死ぬほど好き。
多分ね。