fetish hole

18禁の内容です。フェチズムやSMに関するものと心の内面にフォーカスした内容が多いです。

空間。

受付は店長さんだったから今日は店長さんが切ってくれるのかな?

この前はマネジメントの話をしたっけな。

 

席を案内され、担当はあの人だった。

あの人とは、1度だけ担当で髪を切ってくれた人である。

物静かな印象で、年齢は40歳くらいだろうか…切れ長の目で、私の様子をよく観察しており、それをポジティブに返してくれたので、私はとても印象に残っていた。

いつも私は会話をする中で、大体こんな反応くるだろうと予測しながら進めていく。

しかし、その人と話すと会話のペースがちょっと狂ってしまう…。

私自身、普段から褒められ慣れていないので、普通に褒められてしまうとドキドキしてしまう。

 

前回、そのような気持ちになってしまい、もっとお話したいなあという気持ち半分、見透かされそうで怖さが半分あり、結局指名できずに1年が経過していた。

 

シャンプー台に乗り、お会計を現金かカードか聞かれる。

あ、そうか…もう21時を過ぎているからレジを締めるのか。現金でわちゃわちゃするのも忙しないよな、と思い、

「カードでお願いします。」と返答する。

 

髪の毛に指先がするりと入り込む。

普段なんて話に夢中になって、全然シャンプーの手技がどうこうという意識がいかない。

髪の毛が洗われる流れが、髪の毛や皮膚を通じて伝わってくる。

…あれ、私はこの指先にうっとりしてしまい、言葉を発していないことに気づく。

それと同時に、うっとりする自分が何だか恥ずかしくなってしまった。

顔が覆われていて良かったと、心底安心し、洗われる間に意識を戻すことに集中した。

 

ただのカットだからそんなに時間もかからない。

いつものように、他の美容師さんに話すような他愛もない話をする。

 

「髪、すごく傷んでいますね。」

そう言われ、またドキッとした。

髪の事はよくわからないけれど、聞かれたようなパーマはしていない。

穏便にストレスですね…なんて話をし、この間起きた笑い話をし始めた。

この話は誰でもよく笑ってくれるから、ある種私の中では鉄板ネタどある。

 

「やっぱり関西の人の話は面白いな。テンポが良い。この話を聞いていたい。」

 

見てくれに自身がない分、会話術を褒めてくれるのは嬉しく、私は嬉しくなった。

でもなんか急に言われると、またドキッとするからやめて欲しい…。

 

「そうですかね。こんなネタならいくらでもありますよ(笑)。」

と、笑いながらふとあたりを見ますと、2人きりの空間になっていた。

2人の空間であることを意識しちゃダメだ…。

少し身体が敏感に反応している。

 

「こういう話はね、昼間じゃダメだね…夜じゃなきゃ!夜のこの時間に、仕事の終わりに聞きたい話だね。」

今までで一番声のトーンが大きく、そういうものだよ、と教えられている感覚に襲われた。

これがこの人のテクニックなのだろうか。

 

「そうですかねー。ストレス解消になったなら光栄です。」

 

恥ずかしくて視線が合わせられない。

鏡ごしに目を見るとなんかアウトな気がした。

 

意識しないよう、でも次は指名してみようか(ビジネスとしては上手くハメられている)…そんな風に思いながら、極めて冷静を振る舞ってレジで精算をした。

 

向こうはただのお客のひとりで、私が勝手に意識しているだけなんだよね。

そうそう、そうに違いない。

でもさ、この距離感なんかダメだ。

なんでこの距離感なの?