僕の変身願望④~おねえさん~
SNS-その頃の規制は緩かった。
僕とお姉さんの出会い(出会っても居なかったけれど)緩い世代間の繋がりで、その緩いまま、何かにつけてやり取りは地味に継続していた。
僕は裏垢こそ最近作ったものの、SNSには異存気味であるくらい色んなものに手を出していた。
「当時、お姉さんは24歳だったんですよ、僕は17歳でしたかね…」
と焼いた肉を皿に置きながら答えた。
規制が緩いにしたって、すごい時代だった。インターネットが流通して、まだ大きな事件が起こる前のSNSというか、ネットは緩かった。
「えー、それ本当に!?私すごく罪深い人間じゃない。いや、本当に罪だわ。」
「いえいえ、あの頃は規制なんてないようなものだったじゃないですか。」
「そういう問題じゃなくってさ。私今より危なかったからさ、不安定だったし。いやよく真面な大人でいてくれたよ。ありがとう。もう私死ぬわ。」
「だからなんで死ぬ話になるんですか!!」
17歳の僕は、女性のタイツ姿に魅了されていた。顔なんかよりも断然タイツに包まれた脚のフォルム。
生足では到底表現できない美しさがそこにはあって、僕はそのフォルムにずっと憧れていた。
10代の僕が実践することはなかったが、そのお姉さんの「日記」をずっと読み続けていた。
関係だけは緩く長くと続いていたので、どちらかというと私の内面をダイレクトに知っている数少ない人でもある。
僕はお姉さんの心の中にいる気分だった。
お姉さんはずっと何かに悩み、苦しみ、そして欲望をありのままに書いていた。
時々タイツ姿をあげることがあって、僕はそれに歓喜したし、時々、覗きをしているのではないかと思うほどであった。
あの日以来、僕は少しばかり勇気が出て、勇気を振り絞ってお姉さんに
「会いませんか?」
と声をかけた。
お姉さんは「本気で言ってんの?何のために?」
というレスだったが、
「まあまあ長い付き合いだしね」
という返事をもらって、会う運びになった。
お姉さんはお付き合いしている人はいて、結婚を前提にしているけれど、本当は結婚なんかしたくないってことを僕は知っている。
体調には波があって、その波がしばしばひどく下がる時は、その時には死にたくなるくらい辛そうで、上がる時は獣のような渇望が表現される。
所謂メンヘラというカテゴリに該当するのだろうが、僕はカウンセラーでも医者でもないし、まあ人間らしくて良いんじゃないかと思っているし、寧ろ人らしくて良い。
僕だって変身願望があって、それを公言せずにきているし、言葉でどんな風に表現すれば良いのか分からないままでいるんだ。
きっとこのままいっても、happyな結婚生活なんて無理なのだろう。
結婚相談じゃなくて、お姉さんに僕の性癖をきちんと話すと、僕は少しまた安心できる気がした。
お姉さんは僕の話を肉を食べながら「うん、うん」と聞いてくれた。
僕の性癖を少しずつ紐解いていく作業を手伝ってくれている気分だった。