FATISH GAME 3 日常と非日常の隙間
もう何度かやりとりした方でした。
若くて、とても熱意に溢れている方でした。
この度担当から外れてしまうということで、これまでのお礼にと、私からお誘いしたのです。
担当者の半田さんは、19時に渋谷の個室を予約したと連絡を入れてくれていました。
そんな日に限って、私は電車の遅延に巻き込まれてしまったのです。
駅の構内にはどんどん人が押し寄せ、規制がかかる始末…幸いにして、私は規制が引かれる前の列に入っていたのです。
急いで半田さんへメールを入れました。
【ごめんなさい、遅延で目処が分かりません。また連絡を入れます】
【了解しました。先に入っています。お気をつけて。】
あー…もう最悪、こんな日に限って。
しばらくして電車に乗れるタイミングが訪れました。
その時、誰かのヒールに私のお気に入りのストッキングが引っかかってしまい、少し伝線してしまいました。
せっかくの日が台無し…でも遅れるよりいいわ。
脚なんてきっと見ていない。早く行かなきゃ。
半田さんは掘りごたつの個室でのんびり待たれていました。
私は駅から早歩きで来たため、うっすら汗をかいていて、申し訳ない気持ちで席へつきました。
「大変でしたね。僕もTwitterのタイムラインで追っていましたよ。でも良かった、早く到着されて。」
「本当にごめんなさい。もうせっかくお忙しい中お時間作って頂いたのに…今日はありがとうございます。」
「大丈夫ですよ、今日はボクオフだったんで笑。」
いつも日中のやり取りはスーツ姿だったので、私服の姿は少しドキッとしたのです。
ピアス開けているんだな…とか、少し髭が伸びているんだなとか…唇が意外にぷっくりしているなとか…久々に合コン並みの観察力で彼を見てしまいました。
半田さんはアルコールに強く、饒舌に自分の身の上話をされました。
時々お皿を取り分けてくれたり、これは絶対モテる人だなぁと思いながら心地好く話を聞いていました。
「半田さんはモテそうですよね。お仕事の時もそうですけど、仕事と仕事の間に必ずゆるトーク挟まれるし。気遣いもできるし。本当、担当から外れるのは残念ですよ…もっと一緒にお仕事したかったな…。」
「ありがとうございます。…んー、まあモテはしますよ。するだけなら相手に困りませんよ。ハハッ。」
「ああ、まあそうでしょうね笑。」
若いし、二十代ならそんなもんだよね。
彼が20半ばで、私が32…完全オバサン的な存在だよね。だから私は婚活もうまく行かないんだわ。
少し自分の身分に刺さりながらも、半田さんとお仕事できた事は良い経験だったのです。
若くして自分のビジョンが明確で、好きというより、少し憧れに近いものがありました。
「すみません、半田さん。私お手洗いへ行ってきますね?」
「あ、はいどうぞ。」
奥の席から移動をし、部屋の外へ出ようとしました。
「ユウさん、脚…」
「えっ…?」
半田さんは伝線した足首を掴み、ギュッとされてきました。
私は名字で呼ばれなかったことと、いきなり足首を掴まれてしまったことに、一瞬訳が分からなくなり、その場に蹲み込んでしまいました。
「え、えっ…?」
半田さんは動じていませんでした。
「ユウさん、これ今日引っかかっちゃったんですか?可哀想に…Diorのロゴが傷ついちゃって…。」
そう言って私の足首を握ったまま、足首から膝までキスをされました。
「半田さん…?」
「このタイミングだから言いますけどね、ボクは女性の脚が好きなんです。顔立ちは記号にしか過ぎなくて…でも、脚は…ボクは脚が顔に見えるんです。ボクはユウさんの包まれた脚が好きなんです…。」
半田さんはそう言いながら、顔を近づけ、キスをしてきました。
私はその熱量に押されてしまい、半田さんの唇を受け入れてしまいました。
唇を合わせると、半田さんの舌がにゅるりと入り込み、口腔内にある唾液という唾液を吸い尽くしてきました。
「んんんんっ‼︎」
私は隣の個室のお客さんにバレないよう、半田さんの肩を手で叩き、抑止を図ります。
「何…?」
「ここ、お店だから…出禁になるよ。バレちゃう。」
半田さんの顔は赤く火照っていて、いつもの全然表情が違っていました。
目は少しトロンとなっていて、欲望の塊を私へぶつける様な雰囲気が出ていたのです。
「出禁にならないようにすれば良いさ。…ねえ、見て。ユウさんとボク、同じのを履いているよ…?」
掘りごたつであることを良いことに、半田さんはパンツを下ろしたのです。
そこにはストッキングの光沢に包まれた、赤く怒張したペニスの姿がありました。
既にペニスの先が濡れていて、余計にいやらしく見えてしまいました。
私はこの異様さに、なんとも言えない気持ちになりました。
「半田さん、これDiorじゃない…?」
半田さんに負けじと、私も半田さんの首筋にキスをしました。
「そうだよ、打合せの時にずっと見ていたり何が好きなんだろって。普段は知らないけれど、ボクと会う時は、9割がDior…。」
気持ち悪さより、嬉しさが増していました。
気持ち悪さより、圧倒的に私を見てくれていた事への嬉しさが優っていました。
「ユウさん、ボク今からユウさんに見られながらオナって良い?ユウさんに見られたいんだ。」
瞳をうるわせ、彼はオモチャを壊した少年のような表情で懇願してきました。
「うん、良いよ…私の目を見ながらオナってみて?」
彼は私の目を見ながらも、時折恥ずかしさで目線を逸らしていました。
「ホラ、私に合わせて?」
「あああ、ごめんなさい。ごめんなさい。」
半田さんは、私と目線を合わせながら、右手で自分のペニスを上下にしごきます。
「ユウさん、ボクもうイクよー…」
「ダメだよ、外に出しちゃ。お店出禁になるよ?」
「ボクもう出るよ…。」
「良いよ、私が飲み込むから出して?」
「ハッ、出る出る出る…‼︎」
私は半田さんのドクドクするペニスを瞬時に加え、白濁した液をお口で受け止めました。
そして、半分は自分の体内へ、半分は半田さんのお口へ注ぎ込みました。
半田さんは素直に自分の性液を飲み込んでいきました。
「体内循環…笑。また戻しただけよ。」
半田さんと何かが近付いた気がしました。
私にはその何かは分かりませんでしたが、何かが蘇るような感覚が湧き上がりました。