上司①
まだ私若い頃。ある年度が変わった時、組織の新しい取り組みで全く畑違いのエンジニア3人ほどがやってきた。
エンジニアのひとりである野田さんは、若かりし時、バンドのボーカルをしていた事もあり、音が好きの私と話が盛り上がった。歓迎会の時も、まあその人と盛り上がって、一次会途中から、二次会もそこそこ話をしていた。
翌日、BEAMSの袋いっぱいに彼のコレクションが入っていた。メタル系の音楽ばかり。これは何かお礼しなきゃな…って思いつつも、日だけが過ぎていった。
野田さんはスピード感があり、結構キレ者であった。何となくだけど、一緒にきたエンジニアにライバル心を抱いているようにも見えた。昔のこと過ぎてよく覚えていないが、エンジニア3人ともう1人、その上の上司とよく飲みに行った。皆、私が車を出せば途中で降ろせるルートだったので、下戸だけれど飲み会好きの私は彼らを乗せて週末の夜はよく飲んだ。
ある日のこと、いつものように飲みに出かけた。そして、野田さんを1番最後に送り届ける。助手席で酔っ払い、テンションが高い。
「行こーぜ、ピリオドの向こうに‼︎」
「はいはい、もうすぐ自宅に着きますよ?」
「お前はピリオドの向こうに行きたくないのか?俺は行きたいと思うぞ?お前もだろ?」
「はいはい、私も行きたいです、行きたいです。もうすぐマンションですよ?」
完全に酔っ払いをあしらう会話をしていた。
マンション前に着く。
グダグダしてなかなか降りようとしない。
「早く降りてください、着きましたよ?」
「みずき…」
下の名前で呼ばれて時間が止まった。
「好きだよ…」
(固まって反応ができない)
「グッナーイ!」