その夏の特別な日③
「ヒルみたい…ちょっとやばいかも…んふっ…。」
いけない、いけない、僕もスイッチが入りそうだった。
先に彼女を最高のコンディションになってもらわないと困る。
「お風呂へ入ろうか。」
彼女の手を引いて浴室へ向かう。
僕のお気に入りの入浴剤をバスタブに入れ、彼女に効能を味わってもらう。
彼女は僕が身体を洗っている間、目を閉じて香りを楽しんでいた。
「上品な香りだね。」
「これな、お勧めやねん。もっとにぎにぎしてみ?香りが楽しめるから。」
言われた通り、彼女は入浴剤をにぎにぎしながら広がる柚子の香りに浸っていた。
「腕を貸してみ?」
「腕?」
僕は彼女の腕をマッサージする。
腕も首筋も、ゴリゴリしている。疲れが溜まっているんだ…老廃物を流さなくては。
「お客さーん、大分疲れが溜まっていますねー?」
「うーん、疲れてる笑。それは間違いない。でもなんで分かるのー?てかマッサージもできるの?すごくない!?」
「身体に良いものはどんどん取り入れるタイプやからね。これは前にRUSHのお姉さんに教えてもろーたやつ。始めは何気なく行ったとこやったけど、僕の身体のこと聞いてくれて、アドバイスしてくれたん。それで覚えたスキルやねん。」
「すごいなー、さすが要くん、何でも吸収するね。私もちょっと前までそんなことも気にしていたけど今は全然だめ…その日を生き抜くことで精いっぱいだ…。」
身体を引き寄せ、唇を奪う。
下唇のぷっくりした弾力、歯の感触、口腔内の容積、舌の厚さと長さを自分の舌を這わせて確かめる。
そうそうこの感触…呑み込んでしまいたい。
「なあ、僕の目見て?」
いつもの合図を投げかける。
僕の目はよく分からない秘密があって、人のオーラとかそういうのが読めてしまう。
この目は自分にとって負のものでしかなかったけれど、彼女は僕の目が吸い込まれるような目で好きだと言ってくれた。
そういう彼女のオーラは独特で、正体を見せるまではポップなカラーで、僕と二人きりになってから紫色へ変容し、完全にスイッチが入った時には真っ黒に変容した。僕と同じようなものを持っているんだと確信したのを覚えている。
僕の目を見るなり、彼女はスイッチが入った。
こうなればもう僕のもので、バスタブの中でしばらく裸の状態で愛撫を楽しんだ。
すぐにコリコリになる乳首とクリトリス、指を入れればぬるっと吸い込まれるヴァギナ。
生きているダッチワイフのようだけれども、もっともっと彼女はダッチワイフになれる素質がある。
「そろそろ包まれようか?」
「うん、包まれたい。もう何もしなくてよくなりたい。」
「何もせんでええよ。僕の、僕だけのお人形さんになってくれればええよ。色んなお人形さんになって欲しいから…いっぱい持ってきたんやから。」
さあさあ、これから長い夜が始まる。
この日のためにちゃんと記録を残そうと決めていた。
本当は僕と彼女の部屋を作るつもりだったのに、コロナで全ては0になった。
僕は年明けから続いた耐え難い精神的なダメージを喰らわされていて、3月の初旬にはHPは0になりかけていた。
そんな状態を救ってくれたのは彼女だったのに、神様はそんな僕に更なる試練を与えてきた。
僕は負けない…この特別な時間を最大限楽しむと決めたのだ。